*ご本人様の許可を取った上で、前作に寄せられたshe.oakenさんのコメントの内容を取り上げております。
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「豊穣の国ウーラシール」の可能性
この文章ではウーラシールの信仰について考えていこうと思う。答えらしきものは出ていないので、考察は個々人にお任せする(いつものこと)。
だがまず読者諸氏にお願いがある。拙noteに寄せられたshe.oakenさんのコメントを読んで欲しい。
すっごいこと書いてあるから。重要な事書いてあるから。なんだったら私の書いた文はすっ飛ばしてくれて構わないから。私の文章は指輪物語における「序章」のようなモンだから。
she.oakenさんが何を教えて下さったかというと、アイルランドに実在するOola村の付近一帯を「黄金の谷または黄金の脈(the Golden Vale/Vein)」と呼ぶ、ということだ。
黄金の谷Oola。あまりに興味深い。筆者はコメントを頂いた時、本当に目を見開いた。詳しくはshe.oakenさんのコメントを参照のこと!
さて、Oola地域がなぜ黄金の谷と呼ばれるかと言えば(これもまたshe.oakenさんに教えて頂いたのだが)、その辺りがアイルランド随一の肥沃な牧草地帯で、その枯れ草が一面黄金に輝くからだとのこと。
ヨーロッパにおいては豊かな牧草=多くの家畜(羊とか)という連想が働いて、豊かな牧草地帯=黄金の土地ってことになるらしい。ウーラシールは黄金の国だが、その黄金とは豊穣を意味するものだったのではないだろうか?
星と蜂蜜と豊穣
ウーラシール Oolacileの語尾ileには「蜂蜜」か「星」の意味があるのではないかと拙前作にて筆者は書いた。そのどちらであるにせよ(もちろんそれ以外の可能性も高い)、それは豊穣の大地母神と繋がりはしないだろうか。
その理由は「蜂蜜」は多くの地域において富と豊穣を意味するものであったから、というのが1つ。
もう1つは「星」、というか「金星」がシュメール神話のイナンナやメソポタミア神話のイシュタルといった豊穣の大地母神のシンボルであるからだ。
まず「蜂蜜」と豊穣神を繋げて考えた理由を説明しよう。
蜂蜜は世界中で普遍的に珍重されてきたもので、一種の宝物だ。ウェールズ地方では農民が年貢の代わりに蜂蜜酒を納めていたというし、聖書にある「約束の地」は「乳と蜜の流れる地」と表現されている。
そんな訳で「蜂蜜」は富と豊穣のシンボル、豊穣神(女神に限らないが)の象徴として十分機能する語だと筆者は考えている。
これもまあ、Oolacileに「蜂蜜」の意味が含まれているとしたら、を前提とした「もしも」の話でしかないのだが。
次にクウェンヤile(星)と金星を結び付けたわけを説明したい。
星は、中つ国において常に重要で尊ばれるものだ。その中でも特に明星(=金星)は最重要の星とされる。なぜなら明星の光は大宝玉シルマリルの放つ光そのものだからだ。
シルマリルは「全世界の運命を閉じ込めている」と大天使が宣告した宝玉。汚れなき生きた光がダイアモンドのような透明な入れ物の中に入れられたもの。
シルマリルを巡って多くの物語と悲しみがあり、最終的にシルマリルは天を渡る船と共に明星として中つ国を照らしている。それが中つ国の明星だ。
個人的な意見に過ぎないのだが、中つ国の文脈でthe Starと言えばそれは明星だろうと思う。それほどまでに重要な星だからだ。
だからもしOolacileにileという語が含まれていたら、もしile(星)が「明星」の意味を持って使われているなら、ウーラシールの名前には金星が含まれることになる。そして金星は大地母神のシンボルであるから、ウーラシールと豊穣の女神は繋がりがあるのではないか?
というのが筆者の妄想だ。あまりに多い「もし」の上に立つ脆い考えだが、そう考えると束人たる筆者が楽しいので敢えて書いておくことにした。
だがそもそもileの意味はstarであって明星ではない。その点は明示しておくべきだろう。ウーラシールの名前に金星が含まれてるという主張は、我ながらこじつけ感がすごい。
しかし「蜂蜜」説を採るにしろ「明星」説を採るにしろ、ウーラシールは豊穣神と繋がりがありそうな気がする。
ウーラシールと豊穣神
ウーラシールは豊穣の国である気がする。ならばその信仰はどうであったのだろうか。
神話的に考えるなら、豊かな土地が豊かなのは豊饒の神の祝福があるからだ、ということになる。ならばウーラシール人はいずれかの豊穣神を信仰していたのではないだろうか。
豊穣神というのは無数にいるが、やはり名高いのは大地母神であろう。
大地母神の例を挙げれば、先述のシュメール神話のイナンナ、メソポタミア神話のイシュタル、そこから派生したと考えられているギリシャ神話のアフロディーテ、デメテル、北欧神話のフレイヤなどがいる。
彼女らは多く「美」をも司り、金星の女神とされることが多い。大地母神は豊穣と美と金星の神性を兼ね備えることが多いようだ。
ウーラシールは黄金の国。
黄金は蜂蜜の色であり、
家畜を養う枯れ草の色であり、
稲を孕ませるイナヅマ(稲夫、稲妻)の色であり、
金星を司るイナンナ系大地母神の色であり。
なので多分、ウーラシール人は大地母神を信仰していたんじゃないかとは思う。豊穣の男神という可能性も十分あるが。
ただウーラシールにまつわるキャラクターには女性が多いことを考えると、女神かなあと思いたくなる。地中海系神話では蜂蜜をもたらす蜂の神は女神であるし。
それにウーラシール人の信仰が豊穣の女神崇拝であったなら、人間の信仰が大地母神から雷の父神(グウィン)に移った、ということになるのも重要だと思っている。
母権社会から父権社会への移行は現実世界にもあって、色んな神話をインストールして成り立ってるっぽいダークソウル世界にもそれが反映されている気がしている。
そのためにはウーラシールが女神信仰の国であった方がストーリー上都合がよい気がするのだ。根拠はそれぐらいで、弱いのだけれど。
小話2つ
その1。ウーラシールってアヴァロン要素あるよねえという話。
アイルランドの地名Oola(アイルランド語ではÚlla)には「リンゴ」という意味があって、語源の1つにスコットランド・ゲール語の「ubhal リンゴ」がある。
そしてアヴァロンの意味は「リンゴの島」だという説があるのだ。
しかもウーラシールではアルトリウス(アーサーの語源)が死にかけている。アヴァロンは瀕死のアーサー王が運ばれたという島だ。
これらの理由からウーラシールってアヴァロンっぽいなあと思っている。
小話その2。ウーラシールとロスリックって関係ありそうという話。
Oola地域を「黄金の谷」と呼ぶということなのだけれど、ロスリック王国の名前の元ネタであるロスローリアンという地名の意味は、直球で「黄金の谷」だ。
だからウーラシールとロスリック王国には、何かしらの関連がありそうである。
参考サイト
イナンナ – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%8A)
イシュタル – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%83%AB)
アプロディーテー – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%BC)
デーメーテール – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB)
フレイヤ – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A4)
カナン – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%B3)
アヴァロン – Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AD%E3%83%B3)
申命記(口語訳)_第26章 – Wikisource
(https://ja.wikisource.org/wiki/%E7%94%B3%E5%91%BD%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)#%E7%AC%AC26%E7%AB%A0)
シルマリル – 中つ国Wiki
(https://arda.saloon.jp/?%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%AB)
世界の養蜂の歴史|養蜂器具・ミツバチ|養蜂|株式会社 秋田屋本店
(https://www.akitayahonten.co.jp/aki0303-03.shtml)
遠藤食品株式会社 – 季節に関する豆知識 『雷と稲妻』
(https://www.endo-foods.co.jp/mamechisiki/seasons_mame_kaminari.htm)
【ダクソ版トリビアの泉】このゲームの元ネタに、マヤ神話が混じってる件
(https://www.youtube.com/watch?v=dvsfsXRFqf4)
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