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キアランは蜂の女神、だよな?
スズメバチの指輪の由来は王の刃キアランにあるという。じゃあキアランはスズメバチを紋章にしていた女神、蜂の女神ともいえるのかな?という思い付きからこの考察は始まった。蜂を物語る神話は結構ある。北欧神話にもシュメール神話にもマヤ神話にも。ただそれらは大抵「ミツバチ」の神話なのだ。スズメバチじゃない。まあスズメバチは毒虫だし当然だろう。
実のところ管理人は未だスズメバチの神話を見つけられていない。検索結果に出てくる蜂の画像を見たくないからである。そんな訳で虫画像に耐性のある方よ、スズメバチの神話を是非調べてほしい。そして内容を教えて下さい(土下座のジェスチャー)。
しかしまあスズメバチでも蜂は蜂だろうという大雑把なくくりでキアランを蜂の女神と仮定し、話を進めていくこととしよう。
蜂の女神メリッサ
まずはギリシャ神話から話を始めていこう。最初に取り上げたいのはゼウスを養育したニンフたち。彼女らの中で、ゼウスに蜂蜜を与えたニンフたちをメリッサ(Melissa)と呼ぶ。ゼウスは後に、呪いによってミミズにされた彼女らを蜂へと変えたらしい。ここでメリッサ=蜂、というのを覚えておいて欲しい。
さて次。
メリッサは実のところ大地母神と関わりが深い存在だ。メリッサが地下世界(=冥府)と関連が深く、再生と復活のシンボルとされていたことからもそれが伺える。大地母神と地下世界、死と復活は縁が深いものだからだ。ペルセフォネの冥王との結婚やイシュタルの冥界下りなんかが有名だろう。種は地下で死に、その後地上に実として甦るのだ。
つまりメリッサは「大地母神と近しく、冥府と関連深い蜂の女神」である。
豊穣神の別名
次に話題にするのは、メリッサとデメテル、アフロディーテの関係だ。ここからが本題な感じなので、ちょっと気合を入れてほしい。
まずデメテルとメリッサの関係について。
豊穣の女神デメテルはMelissaやMelittaとも呼ばれていたりするので割と分かりやすい。メリッサはデメテルの別名なのだ。
次にアフロディーテとメリッサについて。メリッサはアフロディーテとも深い繋がりがあり、詩では「ヴィーナスの巣」と表現されることもあった。ここからメリッサ=アフロディーテの一側面?という考えを持つことはまあ、そこまで飛躍しすぎでもないかと思う。
よってメリッサは「豊穣、性愛、繁殖を司る女神の別名」だ。
イエンナ系列の豊穣神たちとメリッサ
そして次に話題にするのがメソポタミア神話のイシュタル。彼女もまたメリッサと関係がある。神話クラスタには有名な話だが、デメテルとアフロディーテはイシュタルと同根の女神なので、関係があるのはむしろ自然。恐らく彼女らは全員シュメール神話のイナンナ系列の豊穣神だろうなあ……。
イシュタルはメソポタミア神話において広く尊崇された愛と美の女神で、戦・豊穣・金星・王権など多くの神性を司っていた。正直メソポタミア神話の主人公では?クラス。イシュタルはシュメール神話ではイナンナと呼ばれていた(まあここら辺はアフロディーテがヴィーナスだったりするのとノリは同じ)。
神性を見てもらえば分かる通り、イシュタルはデメテルとアフロディーテの両女神と縁深い。デメテル(別名メリッサ)は金星と関連付けられているが、先述の通りイシュタルもまた金星を象徴としている。
アフロディーテはアッシリアではメリッタ(Melitta)と呼ばれていたらしく、これはイシュタルの別名でもある。そしてデメテルもメリッタと呼ばれていたりするからデメテル≒アフロディーテ≒イシュタルであり。またデメテルの別名にメリッサがあり、イシュタルにはアッカド地方におけるミリッタ(Mylitta)という別名もあるようだが、なんかもう似たような綴りが多くて気が遠くなる。
とりあえず「蜂(メリッサ)」とイシュタルには繋がりがあるな、と読者の方に何となく伝われば十分である。
つまりメリッサは「イナンナ系列の豊穣の女神たちと密接にかかわっている神格」だ。
女司祭たるメリッサ
メリッサの話はまだ終わらない。本当に多岐に渡る物語を持つのだ、この女神様は。
メリッサは生殖や出産をつかさどる女神アルテミスとも関係があり、メリッサは新生児の魂を蜂の形で母体に送るとされていた。またガイア、キュベレー、レアー、デメテル、ペルセフォネなどの大地母神系列の女神に仕える女司祭はメリッサや「蜂」と呼ばれたという。
ゆえにメリッサは「生殖、出産の女神と関わりのある神格」にして「大地母神に仕える女司祭」でもある。
情報のまとめ
これまでに出した情報をまとめると、蜂の女神メリッサは
「大地母神と近しく、冥府と関連深い蜂の女神」であり、
「豊穣、性愛、繁殖を司る女神の別名」でもあって、
「イナンナ系列の豊穣の女神たちと密接にかかわっている神格」で、
「生殖、出産の女神と関わりのある神格」たる、
「大地母神に仕える女司祭」である。
情報過多にも程がある。
これらの基礎イメージはやはり、花々を飛び回って蜜を作り出し、精巧な巣を編み出す蜂の生態にあるのだろう。蜂の女神はあまり目立たないが、大地母神の系統の中にいる重要な女神であるのではないだろうか。自ら大地を治める、というよりは偉大な大地母神に仕える女神っぽいなあという印象ではあるけれども。
参考サイト
Beyla – Wikipedia
Ḫannaḫanna – Wikipedia
Ah-Muzen-Cab – Wikipedia
Melissa – Wikipedia
Inanna – Wikipedia
イシュタル – Wikipedia
イナンナ – Wikipedia
The Melissae of Ancient Greece | Blue Star Owl
The Melissae in Greek Myth and Legend | Three Hundred and Sixty-Six
みるみるのページ_オリエントの神(エジプトを除く)
イシュタル(Ishtar) – 神魔精妖名辞典
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