キアランがイシュタルの巫女である可能性について(下)

*この記事は前回の記事内容を前提としたものになります。できれば前回の記事からお読みください。

キアランが蜂の女神だとするなら

さて、以上が「蜂の女神」についての地中海系神話における情報だ。これらはミツバチの女神の神話なのでキアランと繋がるかは曖昧で、そこが大問題だ

だがキアランは深淵に飲まれたウーラシールにいたり毒沼に侵されたファランに痕跡を残していたりと、深淵(≒冥府かなあ?と個人的に思ってる)と繋がりが深いので、まあ蜂の女神と見ていいんじゃないかとは思う。

それを踏まえて戯れに言ってみたいのが「キアランはアルトリウス事件以前からウーラシールと関係があったんじゃない?」「キアランはグウィネヴィアに仕えていたんじゃない?」の2つである。


キアランは元よりウーラシールと繋がりがあったんじゃないかというのは、そもそもウーラシール自体が大地母神と関わりがあるんじゃないか?という仮定に基づく話だ。蜂の女神は大地母神と近しいもの。ならばキアランは本来的に大地母神信仰の地ウーラシールと関わっていたのではないだろうか。と、前作を書きながら筆者は思っていた。ただまあ話半分に聞いておいて欲しい。詳細はリンク先を読んでいただけると助かる。


詳しい説明が要るだろうと思うのはグウィネヴィアとの関係についてなので、それを次に説明していきたい。



ダークソウル神話におけるイナンナ系女神

まず、蜂の女神は「王権を授けるイナンナ系大地母神」に仕えるという属性を持つ。だから蜂の女神?のキアランもまたそうだったんじゃないかという想像を筆者は巡らせた。ではダークソウル神話でイナンナ系に該当しそうなのは誰だろう。ここは異論が無数にあるところではあるが(だから面白い)、筆者はグウィネヴィアとイザリスであろうと考えた。


まずグウィネヴィア。グウィネヴィア由来の奇跡は「広く恵みを分け与える」もの。奇跡とは物語。であるならグウィネヴィアは「広く恩寵を与える」という物語を持つ女神であったのだろう。それは正しく大地母神の性質の1つだ。

太陽の光の王女グウィネヴィアに仕える聖女たちに伝えられる特別な奇跡
周囲も含め、HPを徐々に回復する
すべてに愛されたグウィネヴィアの奇跡はその恩恵をひろく戦士たちに分け与えるが
誓約者でなければ使うことはできない

奇跡「太陽の光の恵み」



そしてイザリス。彼女には子が多い。なにせデーモンは全て彼女の子である。多産はやはり大地母神の特徴だ。なにより異形の子を巡る夫神との諍いは、まさしく大地の女神ガイアの神話と共通する

さて大地はまた 傲慢な胆もつキュクロプスどもを生んだ
プロンテス ステロペス 心たくましいアルゲスがこれで
ゼウスに雷鳴を贈り 雷電を造りやった者どもである
まことにこの者どもは その他の点では神々(の御姿)に生き写しであったが
額のまん中に 目はたったひとつしかなかったのだ。
そこで円い目と綽名されたが それというのも
円いひとつの目が彼らの額についていたからである。
すでに体力 腕力 技術ともに備わっていたのだ 彼らの業を為すにあたっての。
さて大地と天からは まだ他のものたちが生まれた
三人の子供たち 巨軀をもち 強力で 名を呼ぶことも憚られる者どもが。
コットス プリアレオス ギュゲスら 傲慢な息子たちがそれである。
粗暴なやからで 彼らの肩からは百の腕が伸びていて
肩のところにはそれぞれ五十の首が
生えていた 頑丈な胴体の上に。
その巨大な体軀には 近寄ることも叶わぬ強い力が備わっていたのだ。
というのも大地と天から生まれた すべての子供たちのなかで
この者どもはいちばん怖ろしく その父親に
はじめから 憎まれていたからである。父親(天:ウラノス)はその子供が生まれる片端から
みな大地の奥処に隠してしまい 光(の世界)のなかに上ってこさせなかった。

神統記



これらの情報から、少なくともグウィネヴィアとイザリスは大地母神と呼ばれる女神だったのではないかと管理人は推測した。そして蜂の女神は大地母神に仕える神格。

さて、キアランはグウィネヴィアとイザリスの、どちらに仕えていたのか?



グウィネヴィアの騎士、に仕える者

個人的には最初に提示した通り、キアランが仕えていたのはグウィネヴィアの方だと考えている。その根拠として、キアランはグウィンとの関係が深いこと、そしてグウィネヴィアが月と関連を持つことを挙げたい。


まずキアランとグウィンの関係がなぜ重要であるかを説明しよう。この関連性に注目したのは、グウィンがグウィネヴィアに仕えていた可能性が高いからだ。

3日後の眷属さんによるBGMのラテン語翻訳によれば、グウィネヴィアは「グウィン(の雷)に黄色を施した」とあり、ここからグウィンがグウィネヴィアに仕えていた構図が見て取れる

またダークソウルのオープニングで描かれるグウィンは手を心臓くらいの高さに挙げて拱手している。各所で指摘されていることだが、これは「支配者のポーズ」というより「仕える者のポーズ」だ。グウィンのポーズを実際にやってみると、威厳を表すというより剣の捧げ持ちや祈りの姿に似ておりグウィンの仕草は眷属さんの翻訳を補強する

そして公に伝わるキアランの称号は「グウィン王の四騎士」、「王の刃」。その名前から、少なくとも表沙汰の上ではキアランはグウィン勢力であったと考えられる。

ならばキアランは「グウィネヴィアに仕えるグウィン」に仕えていたと考えられるのではないだろうか。



大地母神と月

上記の情報に加え、眷属さんの翻訳動画においてグウィネヴィアは「三日月形の飾りを身に着けたグウィネヴィア」と表現されていることが明らかになった。

三日月、月の女神といえばアルテミス

アルテミスは繁殖・出産を司る大地母神系統の女神だ。そして蜂の女神メリッサがアルテミスと関係深いのは先に述べた通り。となればキアランが仕えるのはグウィネヴィアが相応しい


以上のことから管理人は蜂の女神キアランは大地母神グウィネヴィアに仕えていたのではないかと考えている。それはグウィンを通じて間接的にであったかもしれないし、そうでないかもしれない。

何かそんな感じの、考察の原石をネットの広い空にぶち撒けておこう。管理人が楽しいので



雑談:スモウも蜂かもしれない

最後に雑談なのだが、処刑者スモウが仮に男性であった場合、スモウも「蜂」かもしれない。男性であったなら、なのだが。

上級騎士なるにぃさんによれば、スモウの元ネタは女神キュベレーだと言う。キュベレーもまた大地母神だ。そうなってくると大地母神(クババ)が大地母神(イナンナ)に仕えているとかいう訳分かんないことになって……。

謎が深すぎるので細かいことは読者の方にお任せしたい。とは言え、これはスモウが女性であったなら、ではある


ではもしスモウが男性なら? もしそうならスモウを大地母神とは認識しづらい。神話上においては、男神は母神とは呼ばれないものだからだ。

スモウが男性だとするなら、スモウはキュベレーに仕える者だと考えられる。つまりキュベレーの巫者だ。キュベレーの男性信奉者はみずからを聖なる儀式で完全去勢し、その後は女性の衣服をまとい社会的にも女性と見なされたらしい。

であるなら、仮にスモウが男性だとしたら「去勢によって女性に移行した」巫者、キュベレーの女司祭ではないか?という可能性が出てくる。偉大なる女神たちに仕える女司祭を古代ギリシャでは「蜂」と呼んだらしい、というのは先のページで述べた通り。キュベレーの女司祭もその例に漏れない

万が一スモウが完全去勢により男性から女性に移行した存在だとすれば、スモウはキュベレーの女司祭、即ち「蜂」ではないだろうか? スモウもまた「蜂の女神」と認識されるのではないか? 

となるとアノール・ロンドにはイナンナ系巫女クババ系巫女が同時にいたことになる。となればグウィネヴィアはイナンナ+クババな大地母神なのかもしれない


まあ、もし、の話である。雑談終わり。




参考サイト
太陽の光の恵み – DARK SOULS ダークソウル攻略Wiki
アルテミス – Wikipedia
キュベレー – Wikipedia
ク・バウ – Wikipedia
神統記/ヘシオドス/〔著〕 廣川洋一/訳 本・コミック : オンライン書店e-hon
【DARK SOULS REMASTERED】ダークソウルリマスターop
(暫定版)(翻訳) Knight Artorias(意訳)
【ダークソウル考察】スモウの元ネタ、実在する女神像だった件 Dark Souls
中国の挨拶のジェスチャー 【拳を手で包む拱手、握手、お辞儀など】_拱手


Photo by Rosie Arasa on Unsplash


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