Table of Contents
「ファラン」はFarronかFaranか
「ファラン」という名前には2種類の意味が込められているのではないか?という疑いを筆者は古英語辞書を読んでいてふと抱いた。そして調べていくうちにそんな気がしてきたので、記事にまとめてみたのである。
まず公式における「ファラン」の綴りについて。
ファランの不死隊の英名はFarron’s Undead Legion。「ファラン」という地名の公式綴りはFarron。これは確定情報として扱ってよいだろう。
それから日本的ローマ字書記法を用いた場合の「ファラン」の綴りについて。その場合「ファラン」はFaran。別の表記法もあるだろうが、一応はこれで考えていきたい。
公式綴りが基本的な正解だと筆者は思う。しかしFaranには無視できない情報が連なっている。故に筆者はFaranを考察の俎上に載せることとした。以下の2項で、FarronとFaranが持つ情報を説明していく。
鍛冶屋の姓Farron
Farronは実在する英語系の姓である。ノルマンコンクェストの後、フランスからブリテン島に輸入されたものであるらしい。主に鍛冶師の姓として。類似の姓がいくつかある(Farren, Farron, Ferron, Fearonなど)。
由来はフランス語「ferron 錬鉄、鍛鉄」やラテン語「ferrum 鉄製道具、鉄、武器、剣」。基本的に鉄や鉄の道具を示す語であり、ゆえに鍛冶師の姓として使われたのだろう。
となれば「ファランの不死隊」は「鉄の不死隊」or「剣の不死隊」、「ファランの城塞」は「鉄の城塞」or「剣の城塞」と訳せるだろうか。不死隊といえば大剣であるので、「剣の不死隊」は非常に納得がいく。
しかし「鉄の城塞」……。そっちはどうも、何かがきな臭い。
古英語faran
さて「ファラン」の日本語ローマ字表記faran。一見ただの日本語表記でしかないように見えるが、これは古英語の単語でもあるのだ。古英語faranは「行く、旅する、逝く」などといった意義を持つ。
古英語「Far wel」は現代英語の「Farewell さらば」と訳されるようであるから、ニュアンスはその辺りから読み取れる……かもしれない。「どこか遠くに行く」が恐らく古英語faranの語義なのだろう。
ちなみにトールキン教授は指輪物語の文中において、別れのあいさつとして登場人物に ”Fare well” や “Fare you well” を使わせている。教授は古英語の研究者であったから、farewellの由来がfar wel であると当然知っていて、だから敢えてこの表現を用いたのかもしれない。
ファランは流刑地。であれば「さらば」という言葉と縁のある古英語faranを名前に持っていても不思議はない。気がする。
この解釈に則れば「ファランの不死隊」は「往きて逝きたる不死隊」、「ファランの城塞」は「往きて逝きたる城塞」となる。
不死隊は深淵を狩り、その最期は自らも深淵に呑まれ幽鬼に討たれるものと決まっている。往きて帰りし物語、にはならない。往きっ放しなのだ。そんな彼らにはFare you well.の言葉がふさわしく見える。
城塞はそんな彼らの拠点だから「帰らない」というニュアンスを持つのか、それとも別の由来があるのか。ここは分からない。もしくは流刑地「さらば」の城塞だからその名が付けられただけかもしれないが。
こういった訳で、筆者はfaranもまた「ファラン」の名前に含まれた意味なのではないかと疑っている。
「ファラン」はFarronでありfaranでは?
流刑地ファランがFarronとfaran、2つの語を含んだ名前なのではないかと筆者が考える理由は以上だ。
片方は正式な綴りであり、もう片方は流刑地と不死隊にふさわしい意味を持つ。
鉄にして剣、往きて帰らず。それがファランの持つ意味なのではないだろうか。
おまけ:薪の王の名前に関する余談
もし「ファラン」がダブルミーニングな言葉であるとするなら、薪の王は2つの名前を持つのではないか?という疑いが浮上してくる。なぜならエルドリッチもそうではないかと思うからだ。
エルドリッチの由来はおそらく「旧支配者」と「この世のものとは思われない」(詳しくはこちらを参照されたし)。この考察に沿えば「エルドリッチ」も2つの意味を持つということになる。
薪の王2人(?)が名前に2つの意味を持つ。ならば他3人も?
まああくまで疑いだ。だいたい不死隊もエルドリッチも元からして1人ではないから、他の王たちとは違うのかもしれない。そんな余談である。
情報元
Farron’s Undead Legion | Dark Souls 3 Wiki
Surname Database: Farron Last Name Origin
ferron – Wiktionary
Latin Definition for: ferrum, ferri (ID: 20505) – Latin Dictionary and Grammar Resources – Latdict
‘faran’ – Bosworth–Toller Anglo-Saxon Dictionary
faran _Old English – Wiktionary
Photo by davide ragusa on Unsplash