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謎でしかない「人間性」
ダークソウルには「人間性」なるものが登場する。しかしこれがいかなるものなのかは、管理人にはよく分からない。
分からないなりに、人間性に見受けられる特徴を列挙しまとめておくこととした。まとめでしかないので、この文では「人間性とは何か」という問いには答えていない。
一応有名どころの情報は詰め込めたと思う。このまとめが他の考察者の役に立てば何よりだ。
「油」不在のキリスト教物語?
ダークソウルにはキリスト教モチーフが結構分かりやすく取り入れられている。
アノール・ロンドに聖アントニーノ・ピエロッツィの像があったり、地下に(深淵の)主にしてFatherなんていうのがいたり、ファランの城塞でミケランジェロのピエタ(が彫り取られた跡)を見つけられたり……。
探し出すとキリがないくらい、ダークソウル世界観の設計にはキリスト教の物語やら芸術品やらがある。
そんな感じにキリスト教的モチーフをふんだんに取り入れてるっぽいダークソウルの中で、油をあんまり見かけない気がするのが不思議だ。
キリスト教はメシア(=油を注がれた者)教だと言うのに。
補足
カトリック東京大司教区 ウェブサイト
キリストは、旧約聖書の言葉であるヘブライ語で「救い主」を意味する「メシア」のギリシャ語訳で、『油注がれた者』という意味である
それに火に油を注げば一時的に火を強められる。でも火の物語であるダークソウルには油があんまり見受けられない。なにゆえに?
……と管理人は皆目分からずにいたのだが、フォロワーさん達から鋭い指摘を頂き、視野が開けた。まさしく蒙を啓かれたのである。
人間性こそが油である、という素晴らしい啓蒙
以下がその明達な指摘である。
ダークソウル2の黒渓谷の穴は火を放つと油の様に燃えますね
下し続けるもの(@ytgapu)さんのツイート
人間性も火を育てる性質があるので油っぽいような
深みの主教や教導師の様に溜め込むと肥える=脂肪みたいです
血液として表現されていると思います。
ビル犬(@kanoichi1)さんのツイートより
深淵の監視者とかガッツリそんな描写です
ロスリック城の梯子ギミックの首切り騎士も同様かと。
騎士達は自分の油をロスリック王子に差し出したのではないでしょうか。王の薪となれる様に
人間性こそが油!!
「人間性を捧げよ」。油は常にそこにあったのか。そして油であるからには可燃性を持つ。不死(=人間性を持つ者)を薪にする理由はそこか!
加えてキリスト教……というか一神教の文脈だと油を注ぐのは聖別のしるし。ダクソの人類は最初から人間性(≒ダークソウル?)っていう油を持っている。
ダークソウルの人類は最初から聖別された存在と言えるのかもしれないなあ。そしてダークリングの顕現を人間性(or 暗い魂?)の活性化の合図だと考えれば、不死は聖別の油が目覚めた人間と呼べるかも?
ちなみに一神教の物語では「油を注がれた者」は救世の王のことを指すのだけれど、ダクソ世界における「油を注がれた者(メシア/キリスト)」とは誰だろう? 選ばれた不死か、カアスが示唆する闇の王か。そこら辺が疑わしくはある。
火の終わりを恐れ、闇の者たる人を恐れ 人の間から生まれるであろう闇の王を恐れ 世界の理を恐れた
闇撫でのカアス
「人のみにある人間性とはなんなのか?」
ということで管理人は人間性に俄然注目することになった。無印での人間性テキストはこちら。
稀に死体に見られる小さな黒い精
使用により人間性1を得、HPを大きく回復する
この黒い精もまた人間性と呼ばれるが
詳しいことは分かっていない
ソウルが生命すべての源であるなら
人のみにある人間性とはなんなのか?
「人のみにある人間性」。人間性を持つのはダクソ世界では人類だけ。そしてダークソウル世界にはキリスト教物語が結構取り込まれている。ではキリスト教の物語で「人間にしかないもの」は何か? と管理人(カトリック信徒)は考えた。考えてみると、そういうものが2つあることに気が付く。
まずは「人の形」。
人形(じんけい)というのは「神の似姿」であるとされている。ゆえに特別だと。
神は御自分にかたどって人を創造された。 神にかたどって創造された。 男と女に創造された。
創世記 1:27 新共同訳
そして「原罪」。
人祖であるアダムとイヴが神に背いたため、人類はみな原罪を負うている、とされている。
35 人祖はどのような罪を犯しましたか。
カトリックの教え カトリック教会のカテキズムのまとめ 改訂版_キリスト教の信仰宣言
人祖は神から「義」の状態におかれていたにもかかわらず、悪魔にいざなわれ、歷史の初めから自由を乱用しました。人祖は神に逆らって立ち、神を除外して自らの意志成しとげようとしたのでした。
そんな感じに「人の形」と「原罪」が人間固有の何か、というのがカトリック流の考えっぽい。
補足
「人間以外は魂を持たない」という風説を耳にしたことはあるが、具体的根拠は私が持っている書籍(聖書とカテキズムの教科書)の中には見つけられなかった。なので、それは言い伝えレベルだと思うので何となく除外。
そしてこの2つの中だと「原罪」の方が何となく人間性っぽい気がする。なぜかと言えばダクソ神族がダクソ人類と同じ形態をしているから。別種族も同じ形をしているなら「人の形」がダクソ人類固有の特徴だとは言えない。
ここまでの情報から立てられる仮説としては「油(可燃物質)=人間性≒原罪?」ということになる。
ではカテキズム的な原罪の定義とは何か。以下教科書から引用。
38 原罪からどのような結果が生じましたか。
カトリックの教え カトリック教会のカテキズムのまとめ_キリスト教の信仰宣言
原罪の結果、人間の本性は弱まり、人間は無知と苦しみと死の支配下におかれ、たやすく罪に傾くようになりました(この罪への傾きは「欲望」と言われます)。
原罪、欲望、罪。ここで原罪と欲望は繋がりを見せる。
人間性とは聖別の油であり、可燃物質であり、原罪であり、欲望を引き起こすもの(もしくは欲望そのもの)、であるのかもしれない。
君はどんなものにだってなれるさ!(物理的に)
そして人間性にはまだ特徴がある。それは人間性は物理的に存在する物質であり、可変性に富んだ物質でもあるということだ。
ウーラシールの魔術師が狂気の内に見出した深淵の魔術。闇の玉を連続で放つ
闇の飛沫
通常のソウルの魔術とは異なり
闇の魔術は重く、物理的なダメージを伴う
人のソウルは、人間性としてより実態に近づくのだろう
楔石が変質化したという貴石。主なき人間性に生じるもの。
闇の貴石
武器の変質強化に使用され、闇の武器を作る。
闇の武器は闇攻撃力を持ち信仰による補正も高くなる
Exploding from the bodies of unfortunate undead,
Pus of Man / 人の膿
this consuming chaos corruption manifests itself as an amorphous black blob,
vaguely resembling some horrific beast in silhouette,
but with no recognizable shape.
運の無い不死の体から吹き出す、
この 消費している/使い果たしている 混沌/混乱 の腐敗は それ自体が不定形の黒いグニャグニャしたものとして現れる。
漠然と/曖昧に いくつかの恐ろしい獣の輪郭に似ているが、
それははっきりとした/認識できる 形を持たない。
このように人間性は確かに物質である。しかも視認できる人間性の形態は植物・鉱物・液体など様々であり、可変性が極めて高い。ここまで来ると「可変性」という概念を物質化したものにすら思える。
すでに情報過多だが、ここから話はもっと面倒なことになる。主にアン・ディールのせいで。
アン・ディールの研究対象
人間性=原罪というのは管理人が立てた仮説ではあるが、一応この仮説を補強してくれる存在はゲーム中に登場する。アン・ディールだ。
アン・ディールの肩書きは原罪の探究者、原罪哲人、Scholar of the First Sin。ここからダークソウル世界にも「原罪」と呼ばれる何かが存在しているだろうことが推測される。
またアン・ディールの槌のテキストから「原罪」探求は割と物理面から行われたこと、物質的な何かを解体する手法が取られたことも見えてくる。
アン・ディールの徒が用いていた槌
アン・ディールの槌
武器というよりは、研究のため
様々なものの解体に使われていたようだ
アン・ディールは王の実兄であったと伝えられる
共に国を興したふたりは、ある時からその道を違えた
そして「北の祠祭の指冠 / 南の祠祭の指冠」テキストによればアン・ディールの研究のために「住民は絶えてしまった」らしい。何を解体していたかはそこから察せられる。
アン・ディールで再生された秘宝の一つ
北の祠祭の指冠
HPが減る代わりに、スペルの使用回数が増える
簡素な指輪に見えるが
極めて強い魔力が秘められている
これが生みだされるまでに
どれほどの罪があったのか
アン・ディールの住人は絶えてしまった
アン・ディールで再生された秘宝の一つ
南の祠祭の指冠
記憶できるスペルが増える
簡素な指輪に見えるが
極めて強い魔力が秘められている
これが生みだされるまでに
どれほどの罪があったのか
アン・ディールの住民は絶えてしまった
人間を物理的に解体することで探求できる「原罪」。人間のみが持つ人間性は物質。アン・ディールの研究対象は「原罪」、すなわち人間性と呼ばれる物質だったのではないだろうか?
このように、アン・ディールに関する情報が(一応は)人間性=ダクソ世界における「原罪」という仮説の補完をしてくれる……たぶん。