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アーサー王とその正妃
グウィンの元ネタの1つがアーサー王伝説にあるかもしれないと思えてきたので、その理由を書いていきたい。まあ60%が「面白ければいい」のノリでまとめられた情報なので、半分以上聞き流すのがおススメだ。
まずは有名どころの情報で外堀を埋めていこう。ダークソウルには元ネタの1つが確実にアーサー王伝説だろ、というキャラが2人いる。グウィネヴィアとアルトリウスだ。この辺りはダークソウル考察勢にはよく知られていることだろうから軽い説明で済ませる。
まずはみんな大好き深淵歩きアルトリウス(英名:Artorias)。「アルトリウス Artorias」の名前はアーサー王と直結している。
古代ローマの軍人ルキウス・アルトリウス・カストゥスがアーサー王の元ネタだという説もあるし、Artorias はウェールズ語名 Arthur の語源だとする説もあるからだ。これはもちろん英語名 Arthur とほぼイコールの名前。
だからアルトリウス / Artorias の元ネタの1つはアーサー王だろうと筆者も思う。
それにアルトリウスが死にかけているウーラシールは調べていくと、どうもアヴァロン要素があるようなのだ。そこら辺の詳細は同ブログ内の記事「ウーラシールと豊穣神信仰に関する話_小話2つ」の項を読んで欲しい。同じ内容を二度打ちするのが面倒なのです。
アーサー王伝説は史実や伝説や政治が絡み合ってよく分からないことになっているから、本当のアーサー王がどんな風だったのかなんて分かりはしない。アルトリウスの伝説も似たようなもの。そんな実体と物語が混沌としている様も、アーサー王と騎士アルトリウスは似ている。
だからまあとりあえず Artorias ≒ Arthur ということで。
次に太陽の王女グウィネヴィア。
彼女の英名は Gwynevere で、この名前の由来は恐らくアーサー王の正妃 グィネヴィア / Guinevere だろう。意味は「白い妖精」とかそんなところ。グィネヴィアは中期コーンウォール語では Gwynnever と呼ばれており、見ての通り名前に「グウィン gwyn」が含まれている。
グィネヴィアとグウィネヴィアは綴りが余りに似ているし、グィネヴィアの別名には”gwyn”が入っているし、もうアーサー王の正妃が太陽の王女の元ネタでいいんじゃないかと筆者は若干投げやりに考えている。
このように、グウィンの関係者の中にはアーサー王とその妃の流れをガッツリ汲んでるのであろう2人がいる。ではグウィン本人はアーサー王伝承に関わりはあるのか。それを次の項で説明していきたい。
白いグウィンと白いガラハッド
ではさてグウィンの名前の元ネタになってそうなアーサー王伝説のキャラクターはいるのだろうか? 個人的にはいると判断した。そやつは「ガラハッド」ではないかと思う。その理由は2人とも名前に「白」が関係するからだ。
まずグウィンの英名は Gwyn で、これはウェールズ語 gwyn が由来だろう。意味は「white(白い、白)」、「blessed(神の祝福を受けた、恵まれた)」。
という訳でグウィンの名前は「祝福を受けた白」と訳せるだろうか。
そしてアーサー王伝説には「白」と関連する名前を持った騎士がいて、それが「ガラハッド / Galahad」だ。ラーンスロット卿とペレス王の娘エレインの子、聖杯探索の騎士。
その名前の意味は純真とか高貴とか勇敢とかだが、重要なのはそこじゃない。Galahad の由来の1つは聖書に出てくる土地「ギレアド Gilead」。だがスコットランド・ゲール語にもgileadという単語が存在する。その語義は「whiteness(白さ、白いもの)」、「brightness(明るさ、輝き)」。
なので、こじつければガラハッドの名前の意味は「白い輝き」となり、意味が gwyn / 祝福を受けた白 に似る。よって筆者は「ガラハッド」がグウィンの名前の元ネタの1つだろうと考えた。
では聖杯探索のガラハッドが大王グウィンの元ネタだろうか? 筆者はそうは思わない。何故ならもっとふさわしいキャラクターがアーサー王の円卓にいるからだ。
そのキャラクターとは王妃と不義を働いた者、円卓崩壊の引き金、愛に目がくらんだ同胞殺し、湖の騎士ラーンスロットだ。
筆者がラーンスロットこそが大王グウィンの元ネタの1つと疑う理由は、ラーンスロットの本名にある。ラーンスロットの本名は息子と同じく「ガラハッド / Galahad」なのだ。ゆえにラーンスロットもまた「白い輝き」の騎士であり、gwyn と繋がるキャラクターであると言える。
加えて、聖杯探索のガラハッドにはグィネヴィアとの繋がりがほとんど無いが、湖の騎士であるガラハッド(ラーンスロット)はグィネヴィアの不義の愛人であり、深い関連がある。グウィネヴィアを娘とするグウィンの元ネタとしてなら、聖杯探索のガラハッドより、湖の騎士ガラハッドの方が相応しい。
アノール・ロンドのフルール・ド・リス
グウィンの元ネタがラーンスロットであると筆者が思うもう1つの理由は、ラーンスロット / Lancelot がフランス伝承出身のキャラクターであるという点だ。
ランスロという名前は,モンマスのジェフリーや中世ウェールズの作品には見あたらない。この人物はおそらく,ケルト起源ではなく,フランス起源だろう。
ケルト事典_ランスロ Lancelot
フランス系の高名な騎士なら百合の紋章フルール・ド・リスを象徴としそうである。フルール・ド・リスは紋章としては主にフランスに関わるものとして使用されることが多いから。実際、J. R. R. トールキン教授は未完の詩「アーサー王の死」でこう歌っている。
しかし彼はグウィネヴィアが 密使を使って
「アーサー王の死」Ⅲ
海の向こうの ラーンスロットに
急ぎ手紙を送り、愛を思い起こさせ、
難儀しているので 助けてほしいと訴えたものと考えた。
もしもバンの一族が 戦いへと急行し、
黒地に 美しい百合の紋章が
アーサー王の援軍として 誇らしげに進軍する様子が
再び見られたら、それは彼の策略と計画にとって
不吉な前兆となるだろう。 それゆえ彼は長く思慮をめぐらせた。
ラーンスロットはこのようにフルール・ド・リスを掲げるに相応しいとされるキャラクターである。ではグウィンはフルール・ド・リスを掲げていたか? 実のところ少しばかりその可能性がある。グウィンかつての居城と言われるアノール・ロンドに、フルール・ド・リスらしきシンボルが彫られているのだ。
アノール・ロンドのこのフルール・ド・リスをグウィンが帯びていた紋章かは分からない。アノール・ロンドには紋章が多すぎるので。だがまあ王都の階段に彫られた紋章であるし、グウィンが使用していた紋章の1つではある(多分)と筆者は思う。
湖の騎士ラーンスロットは百合の紋章を掲げ、大王グウィンはフルール・ド・リスを都に刻んだ。この点もまた、筆者がグウィンとラーンスロットの繋がりを疑う理由である。
グウィンとグウィネヴィアの関係が怪しい
まとめると
- アルトリウス≒アーサー王、グウィネヴィア≒王妃グィネヴィア
- グウィンの名前の意味は「白」
- 「ガラハッド」の名前には白の要素がありそう
- ラーンスロットの本名はガラハッド
- ラーンスロットとグィネヴィアは不義の関係としてすごく有名
- ラーンスロットは百合の紋章を掲げるキャラクターであり、グウィンの元居城アノール・ロンドにはフルール・ド・リスが彫刻されている
よってグウィンの元ネタの1つはラーンスロットかもなあという感想を抱いた次第。信憑性は各自の判断に任せる。ただそうだとしたら、グウィンとその娘であるはずのグウィネヴィアとの関係が怖いのだが。
情報元
ルキウス・アルトリウス・カストゥス – Wikipedia
ガラハッド – Wikipedia
ランスロット – Wikipedia
Artoria gens – Wikipedia
Guinevere – Wikipedia
Arthur – Wiktionary
Guinevere – Wiktionary
Gwenhwyfar – Wiktionary
gwyn – Wiktionary
Galahad – Wiktionary
gilead – Wiktionary
(https://en.wiktionary.org/wiki/gilead)
ケルト事典/ベルンハルト・マイヤー/著 鶴岡真弓/監修 平島直一郎/訳 本・コミック : オンライン書店e-hon
トールキンのアーサー王最後の物語 注釈版/J・R・R・トールキン/著 クリストファー・トールキン/編 小林朋則/訳 本・コミック : オンライン書店e-hon